約 773,910 件
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/62.html
710 名無しさん@秘密の花園 2007/11/10(土) 00 19 39 ID GYkJOveZ いつも妹(ノーマルでは弟)のように思っていて 「この子は(有希は)か弱いから、私が守ってあげなくちゃ」 とか言って可愛がっていた相手からある日突然押し倒されて・・・・ なんてシチュエーションはザラにある。 711 名無しさん@秘密の花園 2007/11/11(日) 00 47 21 ID WML6t6cg 710 なんだそのもの凄く妄想させるシチュエーションは! 712 名無しさん@秘密の花園 2007/11/11(日) 04 04 10 ID rQgdwuvb まぁ有希ハルを妄想する時に必ず通るシチュエーションだよな。 ハルヒの有希に対する溺愛ぶりは、まるで妹に対するそれだよ。 何も知らないハルヒは、自分より長門の方がか弱いんだと思い込み、だから守ってあげなきゃという使命感に燃えている。 でもいざ押し倒されてみると、圧倒的な力差と超宇宙的テクニックの前に為す術も無く、急に小動物化してしまう。 で、事が終わってから言い訳の様に ハルヒ「あたしが本気で抵抗したりしたら有希を怪我させてしまうかもでしょ!べ、べつに(ry」 有希「そう・・・」 713 名無しさん@秘密の花園 2007/11/11(日) 15 01 41 ID /XRDiFqt 「えっ?何?ちょっと有希やめなさいよ!」 「やめない」 「そんなことダメだってば!」 「でも身体は正直」 「そ、そんなことないんだから」 「ある」 「んあっ!」 722 名無しさん@秘密の花園 2007/11/12(月) 18 25 34 ID EeiKyVvu 百合も大好きなんだが、 同性異性問わずモテてモテてモテまくりで、 SOS団全員から花束でも贈られてて、 「えっ………!?(///」ってなってる超々愛されまくり 逆ハー総受けハルヒが好きなんだが そんな異端は俺一人で十分だ! ちくしょう仲間なんていらねぇぞ! さあ、みんなで今日も百合の話をしようぜ! 725 名無しさん@秘密の花園 2007/11/18(日) 19 25 28 ID n2BUGsMc 「これ」 「お花?私にくれるの?」 「そう」 「うん。ありがとう有希、団員として良い心掛けだわ」 「団員としてではない。長門有希個人として…」 「わっ!?ちょっと有希?」 「…」 ↓ 713
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/517.html
朝起きて登校し、途中で友達と会って喋りながら教室に入りいつも通り授業を終える。 健全な普通男子高校生はほとんどこんな日常だろう、もし違うとしても彼女と居るとか部活とかの+αが付くだけだ。 だが、俺の日常はそんなのじゃねえ 涼宮ハルヒ率いるSOS団に入っちまったせいで 俺の日常は+αどころか+zぐらいあるんじゃないのか?+zこれの読み方はしらないが。 俺の日常は意味の分らない同好会未満の変な集団活動をよぎなくされたり、 へんな空間に閉じ込められたり、俺以外が替わってる世界に来ていたりと+zどころじゃすまないような経験をしてきたんだが、 今回はありえないほどに普通で逆にそれが怪しい。 ん?待てよ、俺までハルヒのような考えになってるじゃねえか。とにかく俺は初めはこんな感じだった でも誰だって思うさ、あのハルヒがクラスのみんなと普通に接しているんだからな 「おはよう」 俺は信じられない光景を見た、あのハルヒがクラスのおそらく名前も知らない男子に笑顔で挨拶してる。 もしかしてまた閉鎖空間に迷い込んだのか?だったら発端は誰だ?いや、俺はここまで来るのになんの変化も感じられなかった。 って事はだ。 ただハルヒの性格が変わっただけ・・・・・か。 本当に閉鎖空間でハルヒの性格が変わったのだとしたら入学、いや中学の初めからハルヒはあの性格だろう 確認するために俺は国木田に聞いてみた 「なあ国木田、なんか涼宮変わったな」 「そうだね、さっき僕にも挨拶してきたよ。キョンと付き合っていくうちにまともになったんじゃない?」 国木田は俺の予想と違う答えを出した。 どうやらここは閉鎖空間でもなんでもない俺が今まで暮らしてきた世界のようだ、 ただ昨日のハルヒと今日のハルヒがまったく違うってことだけだな ようやくあいつもこの世界に慣れてきたかと考えハルヒに話しかけた 「何考えてやがる」 「どうゆう意味よ?」 いつもの勢いだ、なんだ?本当に変わったか?さっき見たときとはずいぶん違うな、 もしかしたら俺にだけ厳しいのか?さて俺はハルヒにいくつ疑問符を当てたかな?まったく分らない女だ。 いや?この場合おれか? 「やけに皆に優しいじゃねえか」 「だから何だっての?私が同級生と接するのがそんなに嫌?」 やっぱりいつものハルヒじゃねえか、逆にいつもよりきついぐらいだ 「別に」 だがお前が皆と話してるところを見るとなんか変な気持ちになる・・・風邪か? 「ふん」 なんでだろうな、俺に対する態度がいつもより倍きついぞ? 「今日SOS団はなにするんだ?」 この質問は俺自身わかってたかもしれない、SOS団なんて同好会未満の集団はいつも通りなにもせず過ごすだろう。 「そうだ、私今日SOS団には行けないわ、皆で何かやってて」 「今日陸上部に出ようと思ってるの、悪い?」 OK、どうやらハルヒは壊れちまったようだ。関わらないでおこう。 結局いつものように授業を終えて昼休みに入ったんだが、あのハルヒが教室から出て行っていないのだ。 なんと女子グループの中心で笑ってやがる。なんだ?もしかして朝倉が中に入ったのか?だったら気をつけないとな。しかもさっきから俺のほうチラチラ見てやがるし。 谷「なんか涼宮も不気味なぐらいまともになったよな?猫かぶってるんじゃないか?」 確かにあいつは猫かぶってるときがある。すぐに戻るけどさ。 国「でも皆、涼宮さんとこ行って話してるよね」 谷「大方、いつもとのギャップに引かれてるんだろ俺は近寄りたくないね、また振られ・・ゲフンゲフン・・・いやなんでもない」 キョン「おい谷口、チャック開いてるぞ」 谷「え?ああ開いてたか」ギギギギ そのまま昼休みが終わり、放課後になって部室に行く。 ノックして入ったが長門しかいない・・・・そうかハルヒは陸上とか言ってたな・・・ 「ハルヒがなにか変なんだが、世界が変わってるとか無いか?」 「無い、涼宮ハルヒの精神やこの世界が改変された形跡は無い」 そうか、何も無いか・・・じゃああいつもSOS団に来る時間がへるのかな・・・気付くと長門は俺のことをジーっと見ている。俺の顔になにか付いてるか? 「あなたは涼宮ハルヒに会えないとさびしい?」 くっ長門、痛いとこ突いてきやがる。たしかに俺はハルヒがいないと寂しいかも知れない。 それはもちろんSOS団団長としての意味も有り、もう一つは・・・・・・・・口にしたくは無いが、俺はハルヒが好きだってことだ 「さびしいな、あいつにあえないとつらい」 って俺は長門に何話してるんだ、 「あなたは涼宮ハルヒに明確な好意をいだいている」 ああそうだなわかってる、お前と話してるうちに気付いた。 長門は話し終えるといつも通り本に向き直った。 「そうだよな・・・悪い俺帰る」 気まずくなったから俺は帰ろうとしたところに長門の声がかかってきた。 「あなたは涼宮ハルヒに会いに行ったほうがいい」 長門は俺が望んでたことを口にした、そうしたいけど、ハルヒに迷惑じゃないのか? 「それは行ってみないとわからない・・・・私には涼宮ハルヒは自分が変化したことにあなたがなにか反応を起こすか実験してるように見える」 俺の反応?まったく悪趣味だな、何考えてやがる 「わかった、行ってくるよ」 ハルヒになんで来るのよ!!と怒鳴られたらスタコラサッサと帰るぜ。 俺がグラウンドに行ったときに陸上部は学校から出てランニング中だったのだろう、居なかった。 はりきって来たのにやる気を削がれたな。長門なら知ってただろうけど、なんで教えてくれなかった? そのまま俺はグラウンドのそばで待っとくことにした。 30分ぐらいしたころか?ハルヒは帰ってきた。どうやらこれで部活は終わりのようだな。ハルヒは俺が待ってることにに気付いた。 「あ!キョン、待ってたの?」 ハルヒはいつもの笑顔に戻ってた。いたずらが成功した子供のような笑顔で 「なら、一緒に帰りましょ」 やれやれ、だけど妙に優しいのより俺はこっちのハルヒが好きだ。一緒に坂道を下りながら決意した。 この後告白しよう―――――― 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5547.html
姉妹編『長門の湯』『鶴屋の湯』『一樹の湯』『みくるの湯』もあります。 ====== 『ハルヒの湯』 「何よ、ホントに当たり入っているの? 全部はずればっかりじゃないでしょうね!」 商店街の福引のガラポンのハンドルを無意味に力いっぱい握り締めたハルヒは、苦笑いをするしかない係りのおっちゃんに文句を垂れている。 「大丈夫だよ、お嬢ちゃん。まだ、特賞も一等賞も出てないから、安心しな」 「ふん、ホントかしら」 そのとき、コロンと出た玉は、また白、つまり今度もはずれだった。 「ほらーー」 「ほい、またティッシュ。あと一回だよ」 ハルヒ連れられた俺たちSOS団の面々は、映画の撮影でお世話になった商店街の大売出し協賛の福引コーナーに来ている。どこで手に入れたのかはあえて聞かないようにしているが、ハルヒは十枚もの福引券を持って、ガラポンに戦いを臨み、そして九連敗中だった。 特賞は五十インチの薄型テレビ、一等は温泉・カニツアーのペア宿泊券が当たるらしいが、今のところは末等のティッシュの山を築くのみだった。 「もういいわ、最後の一回、あんた引きなさい」 「お、俺?」 いきなり俺を指名するなよ。どうせ俺が引いたところではずれしか出ないだろう。 「いやだよ、お前が最後までやれよ」 「なによ、栄えあるトリの権利をあんたに譲ってあげようって言ってるんだから、謹んで受けなさい」 ここで最後に俺がはずれを引いても、ハルヒがはずれを引いても、結局俺の責任にされて、いつもの茶店で奢らされそうな気配がぷんぷん漂っている。ふん、それなら素直にはずれを引いてやるぜ、ティッシュ、山分けしろよな。 俺は、無造作にハンドルを掴むと、これまた無造作にぐるりとまわして、ポトリと転がり出てきた玉の色を確認した。 赤――。 一瞬の静寂がその場を包んだ後、おっちゃんは手に持った鐘を派手に打ち鳴らして叫んだ。 「いっ、一等賞―――」 賞品となった温泉地は結構有名なところだった。 こじんまりした町の真ん中を流れる小さな川の両岸に、古風な温泉旅館が軒を連ねている。何軒かは改築されて、今風のホテルになっているものもあるが、お おむね古の佇まいを残しており、川のほとりの柳並木の遊歩道と、所々にかけられている石造りの橋とあいまって、町全体から古風な温泉街の雰囲気と温泉饅頭 を蒸している湯気が漂っている。 俺が当てたペア宿泊の権利なんだから是非朝比奈さんと二人で、なんて思いが通じることは当然なかった。だからといって、俺とハルヒがペアで行ける訳でもない。 ハルヒは残り三人分の参加に関する諸々の交渉については古泉に一任し、古泉もその要求を否定することはなかった。いつもすみませんね、機関のみなさん。 そんなわけで、SOS団は五人揃って、この風情あふれる温泉街のカニ料理旅館に来ているわけだ。 ひとまず宿にチェックインした後、俺たちは浴衣と丹前に着替えて外湯めぐりスタンプラリーに出発ことになった。 「七つある外湯を全部回ってスタンプを集めると記念品がもらえるの。みんな、夕食前の腹ごなしにがんばって回るわよ!」 朝比奈さんの手を引っ張って先頭を行くハルヒに続いて、俺たちは湯けむり溢れる温泉街を歩いていた。街の中では、俺達と同じように外湯巡りを楽しんでいるらしい浴衣姿の温泉客が夕暮れ間近の川沿いの散策を楽しんでいる。 「どうせ、男女で一緒には回れないから、ここからは自由行動よ。じゃあね、キョン」 少し先で振り返ったハルヒは、朝比奈さんの手をとったまま、右手の建物の中に消えていった。そのあとを無言の宇宙人は振り返ることないまま続いていった。 当然のように、男チームと女チームに分かれて行動することになるわけで、結局、俺は古泉と行動を共にするだけだ。くそ面白くもない。 「やれやれ」 「おや、今日はもう『やれやれ』が登場しましたね」 「ふん」 「我々はもう少しむこうの外湯から攻めることにしましょうか」 「どうでもいいよ」 「つれないですね。温泉はお嫌いですか?」 隣の古泉はやや大げさに驚くような仕草を見せながら、 「僕は好きですよ。この典型的な温泉地の雰囲気、いいじゃないですか。気楽に楽しみましょう」 「うん、まぁ、それはそうだな」 温泉は好きだぜ、もちろんだ。これがお前と二人ではなくて、朝比奈さんと一緒であれば俺のテンションはウナギ上りなんだがな。何が悲しくて野郎二人だけで、温泉のはしごをしないといけないんだよ。 とりあえず、古泉の言うようにこの街の雰囲気は堪能させてもらおうか。 そうして三つめの外湯までは古泉と一緒に回ったのだが、ぶっちゃけ古泉と男二人ではモチベーションは下がる一方なので、より気楽に単独行動しようぜ、ということで話がまとまった。 「では、僕はあっちの外湯に行ってみます。また、後ほど」 「おう、またな」 古泉と分かれた俺が次の外湯を目指して遊歩道を歩いていると、横の通りから飛び出してきた浴衣の固まりとぶつかりそうになった。 「ちょ、ちょっとー、ぼんやり歩いているから誰かと思ったらキョンじゃない。もう、危ないじゃないのよ!」 ハルヒだった。どこに行っても鉄砲玉な女だ。 「飛び出してきたのはそっちだぜ。一時停止違反だ」 俺はハルヒの衝突を物理的にも言葉的にも交わしながら、 「ん、どうした、お前一人なのか? 朝比奈さんや長門はどうした?」 えっ、という感じで不意を突かれたハルヒは、体勢を立て直すと、 「みくるちゃん、温泉に興奮しちゃってのぼせ気味になったから、有希が旅館まで連れて行ってくれたわ。有希も本が読みたいらしいしね。湯船の中では読めないから」 そう言ってハルヒは俺のことをジロリと見上げて言葉を続けた。 「そう言うあんたも一人? 古泉くんはどうしたの」 「いつまでも男二人でつるんでいてもつまらんからな、別行動にしたんだ」 「あ、そ」 そっけなく返事したハルヒは、浴衣の帯あたりに両手を当てて、 「幾つ回ったの? コンプリートした?」 俺は手に持ったスタンプラリーの用紙に目を落とすと、 「いや、まだだ、あと四つだ」 「なによー、まだ三つしか回ってないの? あたしはあと二つよ」 なるほど、その勢いで温泉をはしごしたら、朝比奈さんものぼせるはずだな。 「でも、みくるちゃんじゃないけど、さすがにちょっと疲れたわね」 そりゃそうだろうさ。 「ねぇ、キョン、冷たい飲み物買って来てよ。あたしはあそこで待ってるからさ」 ハルヒが指差す先は、温泉街を貫いて流れるせせらぎに架けられた橋の上に設置されたベンチだった。 まぁ、確かに俺も、温泉で火照った体を冷やす飲み物が欲しいと持っていたところだ。仕方ないがついでに何か買ってやるか。 「わかったよ」 「ノンシュガーのすっきり系でお願いね」 「へいへい」 とりあえずゼロカロリーの炭酸飲料を二本買って指定された橋の上に戻ってみると、読書中の長門の様にちょこんとベンチに腰を下ろしたハルヒは、右手で軽く髪をかき上げながら、風に揺れている柳の枝葉を見つめていた。 立て続けに五つの温泉に入ったおかげで、少ししっとりした髪にわずかに桜色に染まった頬、浴衣のすそに覗く白い素足の草履姿も――、 ううむ、いい感じに絵になっている。 趣の有る風景をバックにして、ただじっと座っているハルヒは、やっぱりかなりのレベルの美人であることは確かだな。性格的なことさえ考慮する必要さえなければ……。 そんなハルヒの姿に一瞬見とれた後、俺はハルヒの隣に腰を下ろした。 「ほれ、買ってきたぞ」 「うん、ありがと」 プシュっとプルタブを起こし、乾杯、と缶をコツンと合わせて、よく冷えたコーラの喉越しを味わった。 うまい! 「ぷふぁー、おいしいわねー」 俺と同じ感想を口にしているハルヒは、さらに、 「やっぱ、こういう時はビールがおすすめなのかもね」 なんてことまで言ってるし。確かにその点においても同感だけどな。 ごくごくっと缶の半分ほどを一気に空けて、ほっと一息をつくことができた。隣のハルヒも大きく息を吐くと、手に持った缶をぼんやり見つめている。 「どうした、やっぱり疲れたのか? 温泉に入って疲れているのは本末転倒だな。だいたい入浴するだけでも体力は結構消耗するらしいから」 「うん、そうね。さすがに五つも連続で入ると、ね」 朝比奈さんは三つ目で脱落したらしい。長門ならまったく平気のはずだが、今回は朝比奈さんにかこつけてうまく逃げたようだ。こういうのも自律進化の一つなのだろうかね。 「スタンプラリーなら、晩飯食ってからでも間に合うだろ。今、あわてて全部回る必要はないと思うぜ」 「そうするわ。古泉くんにもとりあえず中断って連絡入れておいてね」 「わかったよ」 「でも、おかげでいい感じにお腹も減ってきたし、次はカニのフルコース巡りね」 振り返ったハルヒは、力強く肯いた。 残りのコーラを飲み干す頃には、西の空を染める赤がさらに色濃くなっていった。ゆっくり流れる風も、わずかに冷たさを増したようだ。 俺は、うーん、と夕焼け空に向かって両手を突き上げて背筋を伸ばしながら、搾り出すように率直な感想を口にした。 「やっぱ、温泉はいいよな。毎日じゃなくてもいいが、週に一回ぐらいは、のんびりと温泉にはいれるような生活をしてみたいもんだ」 伸ばしていた両手をだらんと下ろして、隣のハルヒに視線を向けると、ハルヒは少しあきれたような表情で俺のことを見つめていた。が、すぐにその大きな瞳の中に怪しげな輝きが煌き始めたのがわかった。 しまった、俺は妙なトリガを引いてしまったのか? 「そうね、帰ったら温泉を掘るわよ」 「な、なんだって?」 「学校に温泉を掘るの。だいたいあの周りは名水で有名な土地柄だし、そもそも日本中どこでも掘れば温泉は出るはずだしね。そうすれば毎日でも温泉に入れるわ!」 今にも浴衣の袖を捲り上げて襷をかけて、スコップを持って走っていきそうな勢いでベンチから立ち上がったハルヒは、空いた口がふさがらないまま座っているだけの俺を見下ろすと、 「なにアホ面してんのよ。早速、古泉くんに頼んで、ボーリング道具を手配できないか探してもらうわよ」 「待て待て待て待て!」 そんなことを古泉に話したら、本当に温泉採掘用のボーリング道具を積んだトラックで、新川さんと森さんが学校にやってくるに違いない。 「バカな事はするなって。勝手に学校に温泉なんか掘るやつがあるか」 「いいじゃない、それぐらい。別に減るもんじゃないし」 減るんだよ、俺の神経が……。 「さ、行くわよ!」 「おいおい、だからちょっと待てって。別に今ここで動かなくても……、まずは夕食のカニを堪能してだな……」 ハルヒは俺の腕を引っつかむと馬鹿力で柳並木の遊歩道をずんずん進んでいく。 俺は、どうやってハルヒを止めようかと思案しながら、それでも少しぐらいは学校に温泉が出ることも期待しつつ、ぽつぽつと街灯に明かりが燈りだした温泉街を引きづられるように駆けて行くしかなかった。 遠くない将来、あの文芸部室が『ハルヒの湯』としてオープンする日が来るのかもしれない。 Fin.
https://w.atwiki.jp/opfan/pages/1400.html
ロブラヌア諸島の河川や沼地等で見られる水棲の人型魔物。 身長は大きくとも140センチ程度。 亀とカエルを混ぜ合わせたかのような姿をしており、濃い緑色の肌を持つ。 頭頂部には皿の様な部位があり、濁った鳥の鳴き声のような言語で会話する。 ウリ科の植物の実が好物であり、これを狙って人間の領域に侵入する事が多い。 力も強く、牛馬や人間を水中に引きずり込む事もあるので水辺では注意が必要。 ちなみに頭頂部の皿は弱点でもあり、この皿を割られたり乾燥したりすると弱体化、もしくはそのまま命を失う事もある。 相対した場合はこの部位を上手く攻めよう。 タイショウガッパ 大将河童とも呼ばれる、群れのボスに相当する個体。 体格は他のカッパよりも大きくなり、その力は掴まれただけで骨折しかねない。 弱点である皿の強度も上がっている。 関連 薫桜ノ皇国 桜魔の五霊格(おうまのごりょうかく) 水筒瓜 目次に戻る
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1557.html
「二人のハルヒ ハルヒの気持ち」 さて、キョン君に代わって、未来の涼宮ハルヒである私が語るわ! 北高校に教師を勤めて間もない頃。 家を買ったので、生活するのに必要な物を買って帰った。 自宅の途中に公園に入って通る事になる。 そこで、一人の少女が俯いたまま座り込んでだ。 よく見ると、この時代の涼宮ハルヒだった。 私は、気になって声かけてみた。 「何をしてるの、ハルヒちゃん」 その彼女は吃驚して顔上げた。 いつ見ても、可愛いわね…。 だから、モテたんだな…私って。 「え、あ…あなたは、確か…キョンの従姉の…鈴見ハルカさん…ですよね」 そういえば、そうだった。 私が勝手に決めた設定だったわね。 「で、こんな所にいて、どうしたの」 ハルヒちゃんは、まだ俯いた。 「それは、その…えっと…」 ははーん、さてはキョン君の事ね。 この頃の私って、ウブだったっけ。 「もしかして、キョン君の事で悩んでたりして?」 ハルヒちゃんの肩を少し動いてたのは見えた。 …図星なのね。 私は、買い物で缶ジュースを思い出し、袋の中から取り出した。 「はい、喉渇いたでしょ、飲んでいいよ」 「あ…ありがとう」 私は、ジュースを受け取ったのを見てハルヒちゃんの隣に座った。 それにしても、こんなに落ち込むような事あったかしら…。 色々思い出しても答え見つからないわね…数年前の出来事だったからね。 「で、どうしてキョン君の事で悩んでるの」 いきなりの質問で、ハルヒちゃんがかなり動揺してた。 「それは!その…」 「大丈夫よ、キョン君には言わないから言っていいよ」 ハルヒちゃんは、ゆっくりと顔上げた。 「あたし、前に夢見てたの…周りに巨人が出た夢を…」 あー、あれね。 思い出したわ、最後は確か…。 「あたしの側にキョンがいたの、それで巨人が出た途端…キョンがあたしを連れて 逃げたわ。あたしはあの世界がいいと思ったの…でも、キョンは「俺達がいた世界がいい」 と…。その後、キョンは私の肩を捕まって言ったの「俺、実は…ポニーテール萌えなんだ」と…。 それを言った後…その…えっと、キ…キスしたの…」 あぁ、そうだった…アレがファーストキスだったわね。 「それなら、いいじゃないの」 「ダメよ!アレは夢だったんだから、実際どう思ってるのが怖いのよ!」 と、ハルヒちゃんが叫んだ。 ちょっと、こんな所で叫んだら近所に迷惑でしょ…。 「キョンは、分かってないのよ!あたしの気持ちを…」 ハルヒちゃんは、まだ落ち込んだ。 古泉君、悪いわね…仕事入っちゃって…。 キョン君は鈍感だから、分かってないのも無理も無いわね。 「…うっ…ひっく…キョンなんか…ひっく…あたしの気持ちをぉ…」 あらら、ハルヒちゃんが泣いちゃったよ。 でも、私は知ってる…いつか告白されるのを…。 「ねぇ、ハルヒちゃん…聞いてくれる?」 ハルヒちゃんは、泣きながら頷いた。 「私はね、昔…そうね、高校時代だったわね…。 私は、入学式当日にある男の子に出会ったの。 その人はキョン君に似てるぐらい優しい男だったのよ。 アレから何ヶ月経ったかな、部活に入ったんだけど…その人も同じ部活に入ったのよ。 偶然としか言いようが無いよね、その後、部活の仲間と一緒に楽しく活動したわ。 で、数ヵ月後…私は夢見たの、静かな世界で私とその男の子だけ残った夢を。 その男の人は何したと思う?」 「…キス?」 あら、分かったわね。 「そうキスしたの、した途端、目覚めたのよ。 夢なのか現実なのか分からなかったわ、それでもあの人の側にいたいとね。 私は、あの人は実際どう思ってるのが怖かったけど。 告白されるまで、頑張って、彼の側に居ようと必死に必死にやって来たわ。」 「あの、その人とはどう…なったの」 いつの間に、泣くのを止んだみたい。 「ん、ちゃんと告白されたわ。アレから何年経ったかな…その人とは無事に結婚したのよ。」 「そうなの…」 ハルヒちゃんが、いつものハルヒちゃんになった。 「あたし、待った方がいいの?」 「うん、待ったらいいよ…だから、頑張りなさい」 私は、ハルヒちゃんの頭を撫でてやった。 「うん、頑張るよ!」 この調子で頑張ってくれたら、告白されるのは私は分かってるから安心していいよ。 「あら、ハルヒ…こんな所にいたのね」 ん、今のは…。 「お母さん」 え、お母さん!? 「あ、こんにちわ…と言っても、こんばんわですね」 私は、呆然してたが慌てて。 「えっと、こんばんわ!」 社会のルールとして、お辞儀した。 「あ、お母さん!この人は新人の先生で、あたしのクラスの担任の先生よ」 私は、まだ慌てて自己紹介した。 「あ、えっと、私は最近、北高校に就職しました。えー…す…鈴見ハルカです!」 危ない危ない、『涼宮ハルヒです』と言ったら終わりになる所だった。 「はい、分かりました…あぁ、この子をよろしくお願いします、この子は無邪気でね……」 喋り続けるお母さんを姿を見ると、涙が出そう。 だけど、我慢しないと…会いたがった人が目の前にいるとは思わなかった。 思い出す…あの日を…。 とある病院で…。 『お母さん!お母さん!』 『ハルヒ…ゴメンね、私はもう…』 弱くなったお母さん。 『いやよ!このままで別れるなんで…』 『…ハルヒ、あなたを育てて…本当に良かったわ』 震える母の手をゆっくりと挙げた。 私は溜まらず母の手を掴んだ。 『ハルヒ、これからも生きてね…私の…大切な娘…うっ!』 『お母さん!』 『ありがとね…さよ…なら…』 掴んでいた母の手は静かに崩れる。 そして、心電図はピーと言う音がずっと鳴る。 『うっ…ひっく…おかあぁさーーーーーん…』 あの日はずっと泣いた。私はお母さんの事を愛してた。お父さんも…。 「…では、もう遅いので、これで」 私は、ずっと考えてたから、全て話を聞けなかった。 「あ、はい!} お母さんはお辞儀したのを見て、私も慌ててお辞儀した。 慌てるのは、これで3回目だっけ。 「えぇ、これからも、よろしくお願いします」 まだお辞儀する私。 そろそろお辞儀する癖はやめようかしら。 「ハルカさん、ありがと!明日から頑張るよ」 「頑張りなさいよ」 私は、ハルヒちゃんとお母さんが去るまで見守った。 言えなかった言葉…今なら、言える。 「ありがとう、お母さん」 私は、誰も居なくなった公園を後にして、自宅へ歩きながら夜空を見上げ思った。 あなたは、昔とは変わらないわね…。 必死に、私を楽しくしたり、私を守ってくれたんだよね。 だから、そういうあなたが好きよ。 あなたの事を愛してるわ。 私は深呼吸してから叫んだ。 「そうでしょーーーー!」 夜空に、一つの流れ星が流れた。 翌日、学校の廊下で歩いてると後ろから何やら騒いでる。 私は、何かなと思って振り向いた。 「バカキョン!いい事思い付いたわ!」 「だーかーらー、ネクタイを引っ張るなって!破れるから」 「つべこべ言わなーいっ!ほらほら、早く!」 やっぱりね、いつものハルヒちゃんとキョン君を見ると安心出来るね。 少しでも、からかっちゃおうかな。 っと、その前に…キョン君ゴメンね、あなたの代わりに私がやるわね。 私は、少し溜息してから。 「やれやれ…」 完
https://w.atwiki.jp/sasamekirico/pages/17.html
まああまりいらないだろうけれど、ニコ生にて25代目としての放送とかのために蓄積している主セレリストです。 何かのお役に立てば幸い。 主セレ配布用(~2010年12月6日)
https://w.atwiki.jp/vs-bomberman/pages/126.html
概要 対ボンのニコ生対応が終わっちゃうので、記念に突発イベしようと思い立ちました。まる。 ルール いつものやつ(雑) 3チームに分かれます 参加者 (参加表明順・敬称略) 白組 黒組 紅組 くるぶし しゃボン quark やまだ いたち とうま あおい 毛玉ボンちゅん 尾崎愉改犯 ヨネ シェイク わきたそ けんぼう 結果 白組 黒組 紅組 くるぶし しゃボン quark 0 3 2 白組 黒組 紅組 やまだ いたち とうま 0 3 0 白組 黒組 紅組 あおい 毛玉ボンちゅん 尾崎愉改犯 3 0 0 白組 黒組 紅組 ヨネ シェイク とうま 1 2 3 白組 黒組 紅組 けんぼう シェイク わきたそ 2 3 0 主催 とうま(@afe_bon)
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/114.html
涼宮ハルヒSOS団、兼文芸部部室。会社の社長席のように配置された団長席であぐらを掻いていたハルヒはうなっていた。右手にはシャーペン、その下には紙が敷かれている。紙に書くのは今後の活動予定表みたいなもの。何を書くべきか思考をめぐらせ、トントントンとペン先でしきりに紙をつついていた。 「団長は活動内容とか資金繰りとか具体的な方針とか、考えることが多いのよ!」 一体、誰に話しかけているのか…おそらくは自分自身。それに対して返事をする者はいない。部屋の隅にはいつものように本の活字を目で追う長門。それと、今からメイド服に着替えようとハンガーラックに手を掛けるみくるがいた。 「こういう時は近くの問題から片付けましょ。今週の土日の活動について」 ハルヒはシャーペンを叩くようにパチンと置いた。 「ねぇ二人とも何したい?!」 さっきまでのはハルヒの壮大な独り言。で、今度は意見を求めている。 「え?…え、えーと」 「有希は?」 「…ない」 それを聞いてジトッとした目つきになるハルヒ。腕組みをして背もたれにもたれかかった。 「す、涼宮さん、そう焦っても出てきませんよ。とりあえずお茶でも淹れますね」 みくるはメイド衣装を引き出すと、着替えを急ぐためにセーラー服を脱いだ。 「あー、それ!」と、突然ハルヒはみくるを指差す。 「へ?」 「それそれ、その下着!新しいの買ったの?」 両方合わせてVの字にフリルの付いたブラジャー。確かに最近買ったもので、学校にしてくるのは始めてかもしれない…。と、いうか何故ハルヒがそんなことまでチェックしているのか。 「可愛い、可愛いわ!よく見せてっ」 いかにも良いもの見つけた!というように、笑顔を浮かべてみくるに歩み寄るハルヒ。一方みくるはおずおずと後退しながら嫌な予感を感じていた。 「うんうん、よく似合ってる。バストラインが綺麗だから下着も映えるわね」 しばらく鑑賞するように眺めると、ハルヒは両手で双の胸をすっぽり手のひらに収めた。 「ひゃぁあ!涼宮さんっ」 「だって、近くで見ると触りたくなるのよ。それより、この重量感とやわらかい感触!素晴らしいわ」 揉むように胸をフニフニと上下させるハルヒ。実に楽しそうにしている。 「有希ー!今日は特別サービス!有希にも触らせてあげるっ」 ハルヒはするりと背後に回り、みくるの腰に腕をまわして後ろからガッシリと抱き締める。 もはや逃げられない。長門は本から顔を上げてこちらを見ている。 「ひっ、やっ、長門さんまでっ!なんでですかぁー」 「暴れても無駄よ、みくるちゃん観念しなさい。ほらほら有希!早く!」 長門は机に本を置き、静かに歩み寄った。押さえつけられた涙目のみくるを見てから、笑顔のハルヒの顔を見る。「はい、いいわよっ」とハルヒの声。長門は片手を出すとゆっくり指でみくるの胸を撫でてゆく。その動きは胸の頂のところで止まった。「…ひっ」と短い悲鳴をあげるみくる。 「…なんか、あたしより有希のほうがエロティックね。意外な才能というか」 ハルヒは満足したのか、みくるをパッと離した。みくるはへなへなと座り込む。 颯爽と団長席に戻ったハルヒはシャーペンを握り、再び予定事項を書く紙に向かった。カリカリとペンを走らせる音が響く。 「喜びなさい!次のみくるちゃん主演の新作映画の趣向が決まったわ」 長門とみくるは同時にハルヒのほうへ顔を向けた。 「百合よ、百合!ガールズラブ。普通の恋愛モノじゃつまらないわ。みくるちゃんと有希でなら大丈夫よねっ。早速あたしは脚本に取り掛かるわ!」 一度走り出したら止まらないハルヒ団長は、どこまでも突き進む。パソコンからワープロソフトを起動させると、忙しくキーをたたき始めた。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5011.html
11月も後半に突入し、日に日に冬らしさが増えてくる。 最近は部活から帰る時点ですでに真っ暗だ。 「今日は転校生が来たぞー」 岡部は教室に入ってくるなり、そう言った。 教室がざわつく。 お前らは小学生か?と突っ込みつつ俺も少しそわそわする。 「すっごい綺麗な女の子だと良いなー」 谷口、だとしたらお前には振り向かないぞ。 「入ってくれ。」 岡部の掛け声と共に、男子が入ってきた。 男子のため息と、女子の囁きが聞こえる。 入ってきた奴は古泉ほどではないものの、なかなかのイケメンだった。 「よし、じゃあ自己紹介をしてくれ。」 「こんにちは、春日清(きよ)です。」 春日とか言う男は澄んだ、綺麗な声で自己紹介を始める。 「趣味は本を読むこと、特にSFが大好きです。宇宙人、未来人、超能力者などに興味があります。」 …え? その時、ハルヒがガバッと立ち上がった。 「ねぇ、春日君。だったらSOS団に入団しない?」 「涼宮、勧誘は後で良い。んーとじゃぁ春日、うるさい奴だが、涼宮の隣に座ってくれ。」 「よろしく、春日君。」 後ろを振り向くと、ハルヒが春日に挨拶をしている。 「こちらこそ。よろしくお願いします。涼宮さんといいましたっけ?」 「そうよ、涼宮ハルヒ。SOS団の団長よ。」 俺はこいつらの会話を聞きながら、何でこんな微妙な時期に転校してきたのか、疑問に思っていた。まるで朝倉の時のようだ。嫌な記憶がよみがえる。 …後で部室に行けばあいつらが教えてくれるだろう。 授業中、春日とハルヒはずっと超能力者、未来人や宇宙人がいるかどうかについて話し合っていた。ったく、春日は転校生なんだからそんなにしょっぱなから先生に悪印象を与えてどうするんだよ? 途中休みになると、ハルヒは春日に俺を紹介した。 「こいつはキョン、SOS団の雑用係。」 あぁ、雑用係とわざわざつけられたのが気に食わないがよろしく。 「キョン君か、よろしく。」 キョンで良い、なんかくすぐったいからな。俺も春日でいいか? 「どうぞ、むしろ僕もその方が気が楽だよ。」 「さぁ、春日君!校舎の案内するからついてらっしゃい!」 そう言い走り始めるハルヒの後を、春日は微笑を浮かべてついていった。 さてと、俺は部室に行くか。 「来ると思っていましたよ。」 なら話は早い、春日、あいつは誰だ? 「彼は涼宮さんが生み出したものですよ。」 何のためにだ?話が合う友達が欲しかったのか? 「いえ、違います。」 じゃぁ何だよ。 「こればかりはあなた自身で気付いてください。一つ、私からヒントのような質問です。あなたは彼と涼宮さんが仲良くしているのを見て、何か感じますか?」 あいつらが仲良くしてるのを見て…なんとなくハルヒを取られた気がしてイライラする。しかし、何故ハルヒを取られた気がするのかも、それでイライラするのかもわからん。 「素直じゃないですね…」 「さらに鈍感。」 うぉ!長門、居たのか。 「居た、最初から。」 そ、そうか… 「おや、そろそろ次の授業ですね。では、私は行きます。」 じゃぁな。 「あなたは?」 もう少し後で行くよ。 そう言ったが、あまり授業に出る気は無かった。 あの二人が仲良くしてるせいでうるさくて、どうせ集中なんか出来ないしな。 「キョーーーーーン!」 ったく、何だよ。 あれ?ハルヒ? 「あんたなんで授業サボってたの?」 あ、いや、何でもない、ただ単にだ。 「そう。」 いつの間にか周りを見回すと、俺以外全員が揃っている。 「さて、今日は新団員を紹介するわよ!」 って、春日?!お前入るのか?! 「うん、楽しそうだしね。」 お前、本当に自分の意思か?ハルヒに強制させられていないか? 「えーと、キョンは放って置いて紹介よ!これが春日君、私たちの同じ1年生よ。今日転校してきて、未来人、宇宙人、超能力者とかに興味があるみたい。ってことで今日から団員だから、皆も自己紹介してね。じゃ、みくるちゃん。」 「あぁ、え?私からですかぁ?えぇと、朝比奈みくると言います。唯一の2年生です。一般的にはお茶汲みをやっています。よろしくおねがいします。」 「美しい方ですね、よろしくお願いします。」 「あ、ありがとうございます。」 「じゃぁ、次は有希!」 「長門有希、趣味は読書。よろしく。」 「私たちはもう自己紹介したから、最後は古泉君!」 「こんにちは、あなたの噂は彼や涼宮さんから聞いています。私は古泉一樹で、SOS団の副団長を務めさせて頂いています。」 「みなさん、よろしくお願いします。」 「新団員も入ってきたことだし、みんな気合入れてね!」 そこから一週間、春日は毎日部室に来て、俺達と打ち解けていった。 しかし、俺のイライラは溜まる一方だった。 何故か、春日と一緒にいるときにハルヒが笑顔になるのを見ていると嫌になる。 クソッ、俺が閉鎖空間発生させたいぐらいだぜ… だが、この気持ちがなんなのかが分からない。 今は金曜日の放課後で、今部室には長門、朝比奈さんと俺しか居ない。 「あのー…キョン君、どうしたんですか?最近イライラしているようですが。」 あぁ、朝比奈さん。気にしないで下さい。 「どうしたんですか?私の力になれることなら…」 そこで、俺は一部始終を話してみた。 朝比奈さんは俺の話を何も言わずに聞き、静かに頷くと 「キョン君は涼宮さんのことが好きだから、春日君に嫉妬してるんですよ。」 えーと…俺がハルヒを好き?春日に嫉妬? 確かに、もしかしたらこの感情は好き、それにこのイライラは嫉妬なのかもしれない。 だとしたらつじつまは合う。 そう…ですね。そうかもしれません。 「キョン君、気付いてよかったですね。じゃぁ、涼宮さんにアタックしてみてください。」 え、でもあいつは春日が… 「ここからは僕が説明しましょう。」 ん?古泉? 「今少しドアの外で聞いてしまいました。春日君は涼宮さんが、あなたに嫉妬をさせるために作り出したものです。」 相変わらずハルヒってすごいな… 「そこじゃないですよ、つまり嫉妬をして欲しいということは」 ということは? 「あなたはここまで来ても鈍感なんですか…?」 …何だ? 朝比奈さんまでそんな軽蔑した目で見ないで下さい…。 長門、お前もだ。 「ならいいです、明日は不思議探索があります。多分何かが起こるので、ちゃんと心の準備を。」 何が起こるんだ?何のための心の準備だ? 「「「…」」」 「よし、みんないるわね!明日は土曜日だから不思議探索をするわ!午前は団長の私用があるから、いつもの場所に1時集合ね!春日君は初めてだから、説明するわね。」 そういうとハルヒは不思議探索について説明を始めたが、ほとんど俺の耳には入っていなかった。 「キョン!遅いわよ!初めての春日君でもあんたより早いわよ!」 おい、春日、お前何故時間より早く来る事を知っている? 「いえ、ただ単に集合時間より早めにくるべきかな、と思ったので。」 …こいつとハルヒを取り合って勝てる自信がない。 「じゃぁいつもの喫茶店に移動!」 おいおい、神様はどんなにひどいんだよ。 午後のペアは 俺と古泉 長門と朝比奈さん ハルヒと春日だった。 俺の怒りのマグマが心の中でブクブクいっている。 「やったー春日君と同じね!私がこの町の良いところ教えてあげるわ!」 ……… 「ありがとう、涼宮さん。」 ……… 何だよ何だよ、ケッ、両方とも微笑みやがってさぁ。 「大丈夫?性格に悪化が見られる。」 あぁ、長門。気にするな。 「じゃぁ出発!春日君、早く行きましょう!」 ハルヒが春日の手を引っ張る。 一瞬怒りで脳味噌が吹っ飛んでいくかと思った。 いつも春日が来る前はハルヒにやられていたが、端から見るとこんなにもカップルに見えるのか…。 「私たちも行きましょうか。」 るせぇな、どこに行くんだよ。 「あなたの好きなところで良いですよ。」 じゃぁ、あいつらをつけるぞ。 「いつからストーカーになったんですか?」 モラルとかルールとか、正直そんなものは今どうでも良い。 俺は、ハルヒを春日に何があっても絶対に取られたくない。 …ここまで俺がハルヒを好きだとは思わなかったぜ。 「気付いて良かったじゃないですか。しかし、男の嫉妬は醜いですよ?」 放っとけ。 ハルヒと春日は、仲良く喋りながらいろいろな場所を回っていった。 大したことはしていないが、俺にしたら二人が傍にいるだけで嫌になる。 そして暗くなり始め、そろそろ集合場所に戻るかと思っていると、春日が何かを言い出した。 俺達の位置からは何を言っているのかは聞こえない。 ハルヒはその言葉に頷き、春日の後をついていった。 「どうぞ。」 古泉が俺にケータイを少し小さくしたような機械を手渡す。 これは何だ? 「長門さんがさっき仕掛けておいた盗聴器の受信機です。」 そういえばさっき長門とハルヒ達がすれ違ったような… 何故仕掛けたのかが気になるが、まぁここは感謝してせっかくだから使おう。 俺今完全なる犯罪者だな… 『ねぇ、春日君、こっちに何があるの?』 『まぁまぁ、僕についてきて下さい。』 二人はテクテクと人気のないほうに歩いていく。 俺達はコソコソとその後をつけて行く。 すると、春日はハルヒを人気のない公園に連れ込んだ。 「これは、もしかして、彼は涼宮さんに告白する気では…」 なぁんだぁってぇぇぇ?! 春日がハルヒに好意があるのは知っていたが、さすがにこんなに早く告白するとは思わなかった。 やばい、ハルヒは中学時代、どんな男に告白されても、その場でふったことは無いらしい。 つまり、春日がハルヒに告白したとしたら、どんなに短時間だとしてもあの二人は恋人関係になるわけである。 しかも、ハルヒもあまり春日を嫌っていないようだ。 ということは本気で付き合いだすかもしれないという事か?! 『どうしたのよ、春日君。こんなところに連れ込んで。』 『俺…ハルヒのことが好きだ!付き合ってくれ!』 『え…』 俺が飛び出そうとすると、古泉に抑えられた。 「後少し待ってください。」 『え、そんな、春日君?』 『僕は本気です。』 『ちょ、春日君、キャッ!』 するとその時、春日がハルヒをベンチに押し倒したのだ。 一瞬、古泉の腕の力が抜けた。 俺はそのまま、ハルヒと春日の前に出て行く。 おい、春日、何やってるんだよ? 春日がこっちを振り向く。 「キョ、キョン?」 「何って、涼宮さんに告白してるんだよ。」 「違うの、キョン、これは…」 そのことじゃない、何故お前はすでにハルヒを襲おうとしてるんだ? 「涼宮さんは告白は断らない主義だそうなのでね。」 だからと言ってお前何故服を脱がそうとしてるんだよ… 俺は黙々と春日に近付き、 ドスッと春日を殴った。 「キョン?!」 「何するんだ!」 女を襲ってる奴を殴って何が悪い? 「別に僕が涼宮さんに何をしようと僕の勝手だろう?」 違う。 俺はな、ハルヒが好きなんだ。 「…え?キョン?!」 最初お前が転校してきた時、俺は自分がハルヒを好きだとは思っていなかった。 だが、お前らが仲良くしているうちに俺は自分がハルヒを好きだって気が付いたんだ。 「キョン…」 「そんなこと言ったって…僕だって涼宮さんのことが好きなんだよ?」 あぁ、だろうな。でも俺だって好きなんだよ。 おいハルヒ、お前は俺と春日、どっちを選ぶんだ? 「…キョン、ごめんね。」 え…。 「春日君もごめん。」 どっちも振るのか? 「うぅん、キョンにはやきもち妬かせてごめんね?後、春日君、気持ちに答えられなくて、ごめん。」 「涼宮さんは、キョンを選ぶのかい?」 「ごめんね、春日君。春日君はすっごく優しいし、頼りにもなるし、趣味も合う。頼りにならなくて、気も利かなくて、ヘタレなキョンとは大違い。だけど…何故か分からないけど…私はキョンが好きなの。ごめんね。」 すると、ハルヒがいきなり倒れた。 お、おい?!ハルヒ?! 「大丈夫、安心して。私がやったこと。」 長門?! 「キョン、君と争えて良かったよ。」 春日の影が薄くなっていく。 おいおい、どうなってるんだよ? 「春日君は涼宮さんがあなたにやきもちを妬かせる為に作ったもの。あなたがやきもちを妬き、告白した今、用はない。」 「だから、彼は消えるんですよ。」 …春日、お前、意外と良い奴だったな。 「君もだよ、キョン。じゃぁ」 「「またいつか、どこかで」」 「キョーン、一緒に帰ろ♪」 ということで、あの日の告白以来、俺とハルヒは付き合うことになった。 春日のことを長門に聞いてみると、一言 「情報操作は得意。」 と言われてしまった。 つまり、多分みんなの記憶から消したんだろうな。 だが、俺は春日のことを忘れるつもりはない。 もしかしたら、あいつとは、良い友達になれたかもな。 しかし、ハルヒが今、俺の隣で笑っているのは春日のおかげだ。 「何考えてるの?」 いや、別に。お前のこと考えてたんだ。 と適当にごまかす。 「もう、キョンったら」 そういうハルヒの顔は、うっすらと紅色に染まっていた。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2039.html
今俺は病院のベッドの上で点滴を受けている。 何のことはない。 ちょっとしたストレス性のなんとかかんとかで、胃の一部が溶けただけだ。 何が原因かと言えば、まぁ、色々原因は思い当たりすぎて何とも言えない。 クラスでの俺の扱いが、色々な事件の末に妙な風になっていること。 隠していた秘蔵AVの配置がズレていたこと。 妹に、知らなくて良い余計な予備知識が増えていたこと。 後は、来年に控えた大学進学に関してが少々重荷だったことくらいだろうか。 そんなこんなで、ともかく今俺は病室で安静にしたいわけだ。 「おい、ハルヒ」 「なによ」 「俺は今から横になって、ゆーっくり休みたいんだ」 「あらそう」 「だから、いいかげん俺のベッドの横でくつろぐのは止めてくれ。胃に悪い」 だが、この女……涼宮ハルヒはそんな俺を一向に構う様子もなく、 来て早々「倒れた団員を気遣うのは団長の務めよ!」と言ったきり、横に居座り続けて、 お見舞いの品を勝手に食ったり、俺が休んでいた間のSOS団での事件を勝手に報告していたりする。 看病というのか病人をオモチャにしにきたのか、ハッキリ言って区別はできない。 「なによ。せっかく人がお見舞いしに来ているんだから、もっと丁寧に扱いなさいよ。 だいたいちょっとしたストレスで胃に穴が空くなんて、軟弱過ぎるの! そんなんじゃあ現代社会で生きてけないわよ!」 ベッドの横の椅子でふんぞり返るハルヒ。 こいつの小言を聞いていると、冗談抜きで胃がキリキリと痛む。 なまじ頭だけは良いから、妙に重々しいことを言ってきて精神衛生上よろしくない。 「これからは、社会に出ても恥ずかしくないくらいSOS団総出でビッシビシしごいてあげるわ! 覚悟して……」 「やめろ」 思わず、吐き捨てるような口調になる。 「………誰のせいでこうなったと思ってるんだ……」 「なによ。あたしのせいだって言うの?」 「あ………その、いや…………」 これは、明らかに俺の失言だった。 無論この胃潰瘍はハルヒのせいではない。 あいつらとの活動に、俺が負荷を感じたことがないと言えば嘘になるが、 まさか胃に穴が空くようなレベルじゃあない。 「そんなことは全然、まったくない……が…………」 俺の言葉は尻すぼみになった。 ハルヒが下から睨め付けるように俺を見ていたからだ。 ある意味、ヘビに睨まれたカエルの気分……というのがこの心境を表すのに適している。 「あたし、帰る」 「ちょ、ハルヒ! 待て! 待ってててて痛てててて………ッ」 急にかかったストレスで、俺の胃は悲鳴を上げた。 ハルヒはそんな俺を振り返ることもなく、椅子を蹴って立ち上がると、 一目散に病室から出て行ってしまった。 無論、胃痛で動けない俺は、その後ろ姿を見送ることしかできなかったわけだ。 思えば、これがあのドタバタした1日の伏線になっていたわけなのだな。 後々から考えてみれば。 ◆◆間◆◆ あれから一週間ほどして、俺は学校に復帰した。 胃に空いた穴もほとんど回復し、長門、朝比奈さん、古泉のお見舞いのお陰もあって、フィジカルもメンタルも絶好調となったからだ。 しかし問題は一つ。 あれ以来、俺は涼宮ハルヒとは会っていないし、一秒たりとも会話をしていない。 「よ、よう」 「………………」 復学早々朝一番の挨拶にも、ハルヒは反応してこなかった。 「まだ怒ってるのか?」 「………………」 返事をしないのも予想の内だ。 今までのハルヒの行動を念頭に置いて考えると、一度キッチリ頭を下げておけば、 どんなにつむじの曲がったハルヒでも、帰りにSOS団の部室に行く頃には機嫌を直してくれると予想はついている。 俺は席に着くと、早速机に手を突いてハルヒの顔を真っ直ぐに見た。 「すまなかった。あの件については俺も」 「いいの。謝らないで」 「悪……ん?」 言葉を途中で切られて、俺はかなり怪訝な顔をしていたと思う。 「な、なんだって?」 「謝らなくていいの。気にしないで」 この時の俺はかなり動転した顔をしていたと思う。 あの涼宮ハルヒともあろう者が、相手に謝罪もさせずに物事を許したことがあったか? いやない(反語)。 「一体どんな風の吹き回しだ。俺はちゃんとこうやって謝罪を」 「いいのよ。それより聞いてくれるかしら?」 涼宮ハルヒが大人しい。声を荒げたり茶化したりすることなく、 むしろ冷静に俺に語りかけてくる。あまりに……そう、あまりに不気味だ。 以前どこかで巻き起こった猛烈な勢いの台風が、町を丸々ぶっ潰しておきながら俺の家だけを無事に残しておく時くらいに有り得ない状況である。 視線を時折外に向かわせたり、教室に戻したりと挙動不審気味なのが尚更におかしさを煽る。 「な、なんだよ」 「………何でも言うこと聞いてあげる」 「は?」 「あたしが、何でも言うこと聞いてあげる」 何の冗談だ、と笑い飛ばそうとした。 笑い飛ばそうとしたのだが、ハルヒの目は本気だった。 茶化すには余りにも真っ直ぐにこっちを見ていたのだ。 「…………ど、どういうことだ?」 「ッ!」 ガタン! と椅子を蹴って立ち上がると、ハルヒはドタバタと駆けながら教室を出て行ってしまった。 「おい、待てハルヒ!」 俺が声を上げたことで、教室中の視線が俺に向いた。 俺は気まずい思いをしながら、視線から逃れるように席に戻るしかなかった。 「何でも言うことを聞くだと………どういうことだ?」 ◆◆間◆◆ ハルヒはその後、1限から5限までの授業を丸々ボイコットした。 鞄を机に置きっぱなしだったから部室にでもいるのかと思ったが、 ガチャッ 「…………」 「なんだ。長門しかいないのか」 放課後部室に入ってみれば、居るのは定位置で読書にふける長門の姿だけだった。 ハルヒどころか、我らがメイドの天使様であらせられる朝比奈さんも、どうでもいいが古泉もいない。 「どうやら、ハルヒは完全にフケちまったみたいだな。何か知らないか?」 「知らない」 「そうか」 長門の回答は簡潔だった。恐らく全く心当たりがないのだろう。 それなら仕方がない、とばかりに俺はオセロを引っ張り出して一人オセロで暇を潰すことにする。 ハルヒが部室にないとなれば、これ以上探そうにも探しようがない。 となれば、いつも通り部室にいてハルヒが来るのを待った方が得策というわけだ。 そして、暇を潰すにも、よっぽどのことがなければ長門の読書を邪魔しないという暗黙の了解がある。 お茶も、朝比奈さんが来てから淹れて貰った方が美味しい気がするしな。 取り敢えず、まずは白と黒の駒を盤の上に並べて、さっそくオセロを……。 「……伝えることがある」 「うぉ!?」 俺はびっくりして手に持っていた駒を取り落とした。 いつの間にか、読書を止めた長門が右隣に立っていたのだ。 しかも顔の位置が近いぞ。 「なんだ。驚かしてまで伝える内容なのか」 「そう」 「どんな内容なんだ」 「あなたの言うことを、なんでも聞く」 「………なんだと?」 「あなたの言うことを、なんでも聞く」 聞き覚えのあるセリフだ。 「長門、それはハルヒに何か吹き込まれたんだな」 「肯定する。涼宮ハルヒが一限開始前に通達してきた」 「『俺の言うことを何でも聞くように』……てか?」 「そう」 ハァ、と思わず溜息が漏れた。 長門を巻き込んで、あいつは一体なにがしたいんだ。 あいつの思いつきは毎度毎度突拍子もないが、今回も突拍子がなさすぎてわけがわからん。 「気にせんでもいいぞ。どうせハルヒの戯れ言だ」 「そうはいかない」 「ん?……そうなのか?」 「そう」 長門が更に一歩前に出てきた。 互いの顔が数センチという近さで、これはちょっと近すぎる。 思わず目を逸らしてしまう。 「な、なんだ。そんなの本気にする必要はないんだぞ。だいたいいつもの気まぐれじゃないか。 てきとうにやって話を流しちまえばいいんだよ。そんなにいちいち真面目くさってやってたら大変だ」 そこまで一気に喋って、チラ、と長門の方へ視線を一瞬戻したが、 長門の顔は依然として超至近距離にある。 「だいたいだな、俺が言うことを何でも聞くって言ったら……例えば、俺がココでキスをしろなんて言ったら……」 「キスを実行する」 俺が視線を戻した時、既に、長門との距離はほとんどゼロだった。 ふっ、とお互いの息がかかり、そのまま長門のくちびるに俺のくちびるが触れ……そして、すぐに離れた。 「終了する」 ほんの1秒未満だったが……これは、確実に………その………。 「な、長門?」 「問題ない。わたしは命令を実行しただけ」 長門はいつもの定位置まで戻ると、鞄に本を仕舞い、それを持ってドアの所まで行った。 「長門……もう、帰るのか?」 「…………………」 長門は答えず、そのままドアを開けて廊下の方へ出て行ってしまった。 終始無言のままの長門だったが、その無表情には微かに別の表情があった。 長門の表情を見分けるのには、俺にも一家言ある。 あれは………確かに、少しだけ、長門の顔は赤かった。 ドタン バタバタバタバタッ 遠くで誰かが階段から落ちたらしい音が聞こえる。 程なく、我らが天使朝比奈さんがやった来たが、彼女によると、 「いきなり長門さんが階段から滑り落ちてきて、びっくりしちゃいました……。 あんなに慌てた長門さんを見るのは初めてですよ。 顔だけはずっと冷静な顔だったのが、ちょっと面白かった……なんて言ったら失礼ですけど」 だそうである。 ハルヒのヤツ、長門に無駄にエラーを蓄積させるとは、まったくけしからんヤツである。 本当にそう思う。 キスできてラッキーとか、そんなことは全く思わないわけではないが、ともかくけしからんヤツである。 ◆◆間◆◆ 朝比奈さんが来て、つつがなく着替え終わった後、 俺は、定番のメイド服に身を包んだ天使の淹れたお茶を美味しく頂戴していた。 今日のお茶はナントカカントカというお茶で、あつ〜い温度で作る渋〜いヤツなのだそうだが、 俺には彼女が淹れてくれるというだけで全てが甘露なので、ともかくおいしく頂戴するわけだ。 「いや〜、まいどまいどすみません」 「いいんですよ。これもオシゴトですから」 別段、必ずSOS団に従事しなくてはならないわけでもないのに、それに全力を注ぐ彼女のなんと健気なことか! 俺は感涙を禁じ得ず、ついでにお茶をもう一杯所望してしまうのである。 「そう言えば、またハルヒが妙なことを思いついたらしいですね。 朝比奈さんは何か聞いていませんか?」 「あ、朝ホームルームが終わった後で聞きました。 その……キョンくんの言うことを、必ず聞くようにって言われてます」 やっぱりか。 「いったいどんなつもりなんでしょうね。 さっきも長門が……その……よくわからないことを言っていて、びっくりしましたよ」 先程のことを思い出し、俺が渋い顔をしていた時、 バァン! と勢い良くドアが開いた。 「やほー! みんなげんきにょろ?」 ドアから飛び込んで来た、このハルヒ並のハイテンションなお嬢さんは、何を隠そう鶴屋さんだ。 SOS団の準団員にして常識派の筆頭。そして古泉の組織のパトロンの家系のお嬢様という、 肩書きでも中身でもテンションでも、全てにハイの付く朝比奈さんの同級生だ。 「どうしたんです? 朝比奈さんならそこに……」 「いやいや。今日はみくるに用事じゃなくて、キョンくんの方に用事があるかなっ」 「お、俺ですか?」 鶴屋さんと言えば朝比奈さん。 そういう図式が頭の中でできていた俺には、それだけで十分不審な空気を感じ取ってしまう。 「いったい、どんな御用です?」 「今日は、キョンくんの言うことをなんでもきいちゃうよっ。ハルにゃんとの約束だからねっ」 ビンゴだ。 「またそれですか。どんなことでも、って言われても困りますよ」 「どうしてかなっ?」 「俺だって心身ともに正常な青少年です。そういう所を配慮していただかないと……」 話半ばで、俺の手は鶴屋さんにガシッと掴まれた。 「つ、鶴屋さん?」 「つまり、キョンくんがしたいのはこういうことにょろ〜?」 鶴屋さんが手を引っ張り、そのまま朝比奈さんの……その、胸部に俺の手を押し当てた。 「ふぇ、ふぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」 「ちょ、つ、つ、鶴屋さんこれは!?」 「ふっふっふっ……めがっさ柔らかいにょろ?」 三人の声が交錯する。 その間、俺の右腕は……その……たっぷりとした重量を手の平に感じていた。 柔らかさはマシュマロ、固さはゴム鞠、そんな二律背反が混在した感触だ。 コンピ研の部長が以前この状況になったことがあったが、これは確かに万死に値する価値がある。 「やや、やめてください鶴屋さん!」 俺はそう叫んだ。さすがの俺もずっとそうしているわけにはいかない。 鶴屋さんの手を振り払い、天使のバストから無理矢理手の平を引き剥がす。 「何のつもりですか! いくらハルヒからの命令だって言っても、これはひどすぎます! 朝比奈さんだって、ほら、何か言ってやってくださいよ!」 俺が憤慨しながら声を上げると、 「でも……涼宮さんの命令だから……」 「しかたないかなっ。これはこれで面白いしね!」 と頬を赤らめたり、ケラケラと笑っていたりする。 ダメだ。真意が読めん。 「今、キョンくんがして欲しいというなら、あたしで良ければキッスくらいしてあげるよん?」 「待って下さい。俺はキスをして欲しいとも身体を触りたいとも思っていません」 「おりょ。キョンくんはお堅いな〜」 「お堅いお堅くないじゃないんです。変だと思いませんか? そんな命令?」 思わず二人に対して声を張り上げてしまう。 この時ばかりは、俺もちょっとばかり腹が立っていたのだ。 「それは……涼宮さんがキョンくんのことを思って、のことですよ」 「どういうことですか、朝比奈さん?」 「だって、キョンくんが倒れたのはストレス性の胃潰瘍だったという話で、 涼宮さんも、それでとっても悩んでいたみたいでしたし……」 「あの時のハルにゃんは、長いこと悩んでいたからね〜。それでみんなで人肌脱ごう、ということになったのさっ」 つまり、これは俺にストレスが溜まらないように……という対処ということなのか。 逆に気をつかってストレスが溜まっている気がしてならないがな。 「だ、か、ら。遠慮しちゃダメにょろ〜。 あたしので良ければ、今ならめがっさ格安で! ちょっとだけ体験させてあげてもいいかなっ」 鶴屋さんが俺の手を取って、そっと胸元に押しつけてきた。 朝比奈さんとは違って、こう、良く締まった身体の上に乗ったソレのアレな感触がジンワリと伝わってくる。 「だ……」 「だ? 何にょろ?」 「ダメです!!」 俺は乱暴に手を振り払った。 「あららら、嫌われちゃったかな?」 「そういうんじゃありません! 俺は……その……」 上級生二人が、俺の次の言葉を微笑をしながら待っている。 「す、すみません! ちょっと失礼します!」 顔を真っ赤にした俺は、全力で駆け出してぶち当たるようにドアを開けると、 廊下を駆け抜け、裏庭の方へと走り込んで行った。 ◆◆間◆◆ 「はぁ………はぁ………」 普段しない運動をしたものだから、肺がぜいぜい言っている。 ちょうど良いところに裏庭用のイスとテーブルが設置してあったので、そこにどっかりと腰を据えた。 なんだ。この状況はいったいどこのエロゲーだ。 いや、俺自身全くエロゲーをやったことがないわけではないので、思い当たるタイトルはいくつかあるが。 「まったく……ハルヒのヤツも変なことばっかり、考えやがって……」 「いや、いいんじゃないですかね。あながち間違った策でもないと思いますよ」 独り言のつもりだったのだが、背後から返答があった。 「どうです。そこのコーヒーですが一杯飲みませんか?」 紙コップを二つ持ってきたのは、いつものうさんくさい笑顔を貼り付けた古泉だった。 俺は無言でカップを受け取って、一口グイと煽る。 「部室では大変だったみたいですね」 「……見てたのか」 「いいえ。しかし、あなたの声は裏庭にも聞こえましたからね。大体予想はつきます」 冷たいコーヒーをもう一口あおり、火照った身体をクールダウンさせていく。 「ハルヒの思いつきも、ここまでくるとちょっとばかり迷惑だな。 さっきお前は間違った策じゃないとか言っていたが、本当にそう思うのか?」 「思いますね」 「何故だ」 「そうですね……簡単な話ですよ」 両手を方の高さに上げて「やれやれ」のジェスチャーをした古泉が話を続ける。 「あなたは今回、潜在的に受けていたストレスによって胃潰瘍になったわけです。 それを完全な形で回復させるには、あなたが何に潜在的ストレスを感じていたのかを特定し、 それが二度とあなたにストレスとならないようにしなければなりません。 専門家でもない我々は、怪しいと思われる可能性を、一つ一つ潰していかねばならないわけですよ」 「………なるほど」 一応、筋は通っているように思える。 「で、その対策の一つが『何でも言うことを聞く』なわけか」 「そうです。あなたは基本的に涼宮さんに行動を制約されていますからね。 一度、あらゆる制約からあなたを開放してみよう、というのが今の涼宮さんの考えだと思われます」 ふむと唸って俺はコーヒーをもう一口飲んだ。 「古泉。お前はハルヒに何か言われたのか?」 「えぇ。『決してあなたには逆らわないように』と申し使っていますよ」 「やっぱりか。まぁ、お前なら特に気兼ねもないからその点は安心だな」 「そうでもありませんよ?」 その時、俺は古泉の目が、普段のニヤけた目とは違う形をしていたのを見ていた。 何か……アマゾンや熱帯雨林の特集をやる動物番組で見たことのある、エサを目の前にした肉食動物の様な目をしている。 「ど、どういうことだ古泉」 「あなたが僕に対して、無意識下でストレスを感じていないとは言えません。 それを確かめるだけです」 明かにおかしな雰囲気を感じ、俺は即座に立ち上がろうとしたが……立てない。 何故か足に力が入らない……なんだこれは? 「古泉……いったいこれは……」 「組織の方から支給された物でして。依存性はありませんし副作用もありません。 ちょっとの間身体に力が入らなくなるだけです」 古泉が一口も口を付けなかったカップを置いて、俺の目前に移動してくる。 「可能性は全て潰しておかねばなりません。 例えば、あなたがわたしに性的な興奮を潜在的に感じていたという可能性も。 これは致し方ないことなのですよ。涼宮さんのため、と思って少々ガマンして頂きましょう」 あのニヤニヤした顔が俺の、目と鼻の先にある。 ヤツの鼻息が俺の顔にかかってきてこそばゆい。 待て。それは明らかに近すぎる距離じゃあないか。 「まさか……古泉、お前まさか………」 「大丈夫。優しくするから身を任せてください、キョンたん」 キモイ! あの古泉がキョンたんなどと言ってくる、この状況が気持ち悪い! それに何だ、何故俺のネクタイをゆるめてシャツの中に手を入れてくるんだ。 やめろそこは違う断じてそんな所にストレスは感じていないズボンの中に手を入れるなちょアッー! 「アナルだけは! アナルだけは!」 思わずそう言って俺は泣いた。 童貞だけど処女じゃない。 そんなアンビバレンツなキャラクターをこれから一生背負っていく自信は、俺にはない。 「やめろ……やめてくれ……」 「そんなに嫌がると燃えちゃいますね。可愛いですよキョンたん」 「ひぃぃぃぃ………誰か………誰か!」 その瞬間、ゲ泉の手がパッと俺から離れた。 俺の可哀想な菊の花も、侵攻から開放されてやっと通常運行になる。 「しくじりましたね。完全に人払いはしたと思いましたが……そちらが干渉してくるとは予想外です」 ゲイは裏庭に植えられた木の下を見つめていた。 そこにいたのは、現生徒会書記であり旧SOS団依頼人だった喜緑さんだ。 両手を後に組んで、一人静かにこちらを見つめていた。 いつの間に現れたんだ! 「なんのつもりですか? 穏健派のTFEI端末が独断で動くとは初めて知りましたよ」 「涼宮ハルヒに急激な変化を起こされては困るの。あなたの趣味で涼宮ハルヒを暴走させて欲しくないだけよ」 そのまま、喜緑さんが何事か……長門の『呪文』のような物を唱えると、 急に俺の萎えていた手足に力が戻ってきた。 手も……もちろん足も動く! 「う、うわぁあぁぁぁぁーーーーーーーーッ!」 「キョ、キョンたん! ぐッ!?」 俺がゲイ野郎を突き飛ばしてその場を飛び退くと、ゲイはそのまま後にぶっ倒れて尻餅をついた。 俺は後も見ずに裏庭からの脱出にかかる。 「これはしてやられました」 「あなたは尻をやるつもりだったのでしょう?」 「つまり、これはそういう意味合いにおいてはあいこ、ということでしょうかね。 僕とあなたはお尻あい、と」 「そうなりますね」 「フフフフ……」 「うふふふ……」 バカのような会話を背後に聞きながら、俺はその場を駆け去っていった。 ◆◆間◆◆ 「はっ………はぁ………はぁ…………」 俺は息も絶え絶えになりながら、商店街を歩いていた。 寒い冬の最中であるのに、商店街まで一気に駆けていた俺の身体は異常な熱を持っている。 今ならきっと頭の上に湯気が見えるぞ。 なにせ、学校から商店街までほぼノンストップで駆けてきたんだからな。 「はぁ……はぁ……………はぁーーーーーーーーーーー……」 大きく溜息。 ハルヒは俺のストレスを開放する、などと言っていたが、開放されてるのは他のヤツばかりじゃないか? 俺自身が解放されている気がちっともしない。 「これは……早急に手を打つ必要があるな。直に発生源を叩く必要があるぞ」 呑気に相手の気が変わるのを待っているわけにはいかない。 普段SOS団の活動で使う喫茶店を前に、俺は携帯電話を取り出した。 ◆◆間◆◆ 「なによ」 「なにじゃない。俺が呼び出した理由くらい、もうわかってるだろ?」 俺は携帯電話でハルヒを呼び出した。 最初はゴネていたハルヒだったが、俺が「言うことを必ず聞くんだろ?」と言った途端、 即座に「わかったわよ」と言ってココまでやって来た。 そして現在、SOS団御用達の喫茶店で、テーブルを挟んでこうして俺とハルヒが向かい合っているわけだ。 「理由って?」 「みんなに言って回ったんだろ。『俺の言うことを何でも聞くように』ってな」 「そうだけど、それがなによ?」 くちびるをアヒルの口みたいに尖らせて、ハルヒは不満げな声を上げる。 「あんたの体調が悪いって言うから、ストレスにならないようにやったことよ。 あたし悪くないもん」 「別にお前が悪いとは言ってない。ただ、そのせいで周りが色々騒がしくてかなわん」 「あたしにどうしろって言うのよ」 「簡単だ。即刻前言撤回すればいい。そうすりゃ丸く収まる」 「嫌よ」 フン、と鼻を鳴らすと、ハルヒは窓の外に目線を投げて言葉を吐き出した。 「絶対嫌」 「………おい、ハルヒ」 「嫌だったら嫌。絶対ヤダ!」 「俺の言うこと聞くんだろ?」 自分で作り出した矛盾にはまったハルヒは、苦り切った顔をして窓の外を見ていた。 恐らく、古泉は今頃組織のバイトが急増して大変なんだろうな。 「ハルヒ。これは俺の命令だ。みんなに言った言葉を撤回するんだ」 「………………」 ハルヒはだんまりを決め込んでいる。 「その代わりだな……」 「………聞こえない! 全然聞こえないわ!」 いきなりそう言うと、ハルヒはガタンとテーブルを蹴る勢いで立ち上がった。 一口も口を付けられていなかったコーヒーがひっくり返り、テーブルに黒いシミが広がっていく。 この騒動に、周囲の目線も一気にコチラを向く。 「待て、落ち着けハルヒ」 「いいわよもう! あたし帰る!」 怒鳴るようにそう言うと、ハルヒは早足にその場を去っていった。 周囲の視線や、こぼれたコーヒーのこともあって俺が一瞬躊躇していると、 ガッシャァーーーーz________ン!! と、隣の席に四輪駆動のごっつい車が突っ込んできた。 「な………」 細かく砕けた窓ガラスが飛び散って、俺の背後を掠めていった。 喫茶店内も悲鳴やわめき声に包まれる。 「ハルヒ……!?」 慌てて入り口の方を見たが、ハルヒは持ち前の駿足でもって駆け去った後のようだった。 まるでタイミングを見計らったような事故っぷりじゃあないか? 俺は呆然とするレジ係を急かして会計を済ませ、急いで外に駆け出す。 ガシャン ギャー ドスンッ ドカ ハルヒを行方は捜すまでもなかった。 まるで道しるべでも作ったかのように、道なりに事故が多発している所がある。 なんだ……あいつはついに世界の崩壊でも願ったのか? その時、ポケットに入っていた携帯電話が鳴った。 「もしもし、キョンたんですか? 古泉です」 「切るぞ」 「冗談ですよ。それより、涼宮さんの状況がかなり悪いことを理解しているか心配で電話したんです」 「黙れゲ泉。貴様の声を聞くと耳が腐る」 「やはり理解されてなかったようですね。今、その辺りで事故が起こっているはずです」 「そうだが、そうだったとしても貴様は黙して語るな」 「その理由は、おわかりですか?」 「ハルヒが世界の崩壊でも願ったのか? それより他のヤツに代われ。貴様は死ね」 「あの……いいかげん、僕も泣きますよ?」 ゲイの声が軽く泣きそうになっていた。 「よし、死ね。それで事故とハルヒが願ったことと、どういう関係がある」 「……………………」 「言え、さもないと貴様がゲイだと学校中に言いふらして回るぞ」 「涼宮さんは『死にたい』と思ったんですよ。あなたのためにやったことが裏目に出て、更に怒られてしまった。 穴があったら入りたい。恥ずかしい。死んでしまいたいと思った……その結果が、今巻き起こっている事故の嵐です」 「つまり……それに巻き込まれて死んでしまいたい、ってことか」 「あなたなら上手くまとめてくれると思ったんですがね。どうやらそうもいかなかったようで」 「切るぞ。時間がない」 「ところで、今これを教えて上げたわけですから僕の……」 通話を切った。 「余計なこと考えやがって……」 俺は事故の起こった通りを急いで駆けていった。 途中、電柱の後で「死にたい……」とベソベソ泣く茶髪のゲイがいたような気がするが、恐らく気のせいだったのだろう。 ◆◆間◆◆ 転倒、転落、衝突、居眠り運転、うっかり、よそ見、物を落としたり、放り投げたり、火を付けたり、 その他考えられる限りの事故を起こした商店街を駆け抜け、 俺はついに商店街を抜けて住宅街に入ってしまった。 住宅街でも、犬が吠えて駆け抜け、自転車が電信柱に突っ込み、猫がひっくり返り、通り一面阿鼻叫喚の地獄絵図の様相を呈していた。 俺は息を切らして足を止め、ここで一つの事実に気が付くわけだ。 「お……追いつかない……」 持久走、短距離走、障害物走でもトップを誇る涼宮ハルヒの駿足に、運動不足の俺が追いつくわけがない。 いつ事故に巻き込まれてケガをするかもわからないこの状況で、ウサギとカメの昔話を実践している場合じゃないんだ。 この状態になったハルヒが居眠りをしてくれるとも限らないし、居眠りの代わりが事故だったら尚更実践できるわけがない。 「ドラ○もんみたいな扱いで悪いが……ここは一つ長門に……」 そう思った時、見計らったようなタイミングで携帯電話が鳴った。 「も、もしもし?」 「涼宮ハルヒの追跡経路をナビゲートする」 長門だった。 「長門か!? どうしてこんなタイミング良く……」 「急がないと間に合わないから」 「そうだな。今はどうこう言っている場合じゃねぇ。じゃないとハルヒが事故にあっちまうからな」 「それだけとも言えない」 「? どういうことだ?」 「見つければわかる」 「で、どうやってハルヒを見つけるんだ」 「あなたと涼宮ハルヒの体内に位置探知用のナノマシンは注入済み。ナビゲートは簡単」 い、いつの間にそんな物を仕込んだんだ。 今日は手首を噛まれた思い出もないぞ。 「あなたには部室で」 部室……あの時のキスはそう言う意味があったのか! 流石長門だ。この時の事を想定して既に手を打ってあるとは。 でも、それならいつもみたいに手首を噛むだけでも良かったんじゃないか? 「進路方向、次の角を左」 無視か。今はそんなことを言っている場合でもないしな。 俺は即座に駆け出して左に曲がった。 ◆◆間◆◆ 「ハルヒ!」 驚いたことに、ハルヒは商店街から住宅街へ出ると、そのまま住宅街をグルリと回って再び商店街へ戻ってきていたらしい。 長門の説明では何だかんだの心理作用がナントカカントカの回帰を起こしたらしいのだが、 ともかく、俺は長門のナビゲートによって、再び商店街へ戻ってきたハルヒの進路方向へ先回りしていた。 「っ!!」 「こら、逃げるんじゃない!」 商店街中程の店の軒下に隠れていた俺は、商店街の大通りに駆け込んできたハルヒの前に奇襲的に登場し、 抱きつくようにして無理矢理ハルヒの足を止めさせた。 聞いたところによると、ハルヒはスピードを微塵も落とさずに走り続けていたらしい。 遠くから声をかけようものなら、あの駿足であっという間に遠くへ逃げられてしまう。 というわけで、俺は商店街の入り口にあった本屋(自転車が突っ込んで片づけで忙しそうだった)で立ち読みをするフリをしていたわけだ。 「放して! 放しなさいよ!」 「放してたまるか! 絶対に放さないからな!」 この寒い中、お互い汗を撒き散らしながら取っ組み合う。 こっちだって命懸けだ。 あいつが呼び寄せていたものが、やっと見えてきたわけだからな。 /´〉,、 | ̄|rヘ l、 ̄ ̄了〈_ノ _/ (^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /) 二コ ,| r三 _」 r--、 (/ /二~|/_/∠/ /__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉 ´ (__,,,-ー ~~ ̄ ャー-、フ /´く// `ー-、__,| タンクローリーだ。 『危険物注意』の看板のひっついたガソリン満タンのタンクローリーが、商店街の向こう側に見える。 どうやら妄想は一人事故にあって痛い思いをするというレベルを越えて、周囲を巻き込んで盛大に散るというレベルになったらしい。 こいつをネガティブに暴走させ続けると、どっかの国が打ち落とした人工衛星の破片さえ呼び込みかねんぞ。 「命令だ! 俺の話を聞け! まずはそれからだ!」 「嫌だったんでしょ? だったら命令なんて聞かない! 聞いてやらない!」 ちくしょう、こいつ完全にヘソ曲げてやがる。 しかも本気で暴れるから、いつ振りほどかれるかわかったもんじゃない。 今逃げられたら、後に迫ったタンクローリーにペシャンコにされた上に大爆発だ! 「ハルヒ……いいか、命令だ!」 「嫌よッ!」 「ハルヒ、俺にキスをしろ!」 「いや……何?」 ハルヒがやっと暴れるのを止めて、俺の目を見た。 「お前が俺にキスするんだ」 「な、なんでそんなこと……」 「他の誰も俺の命令を聞かなくてもいい。お前だけに聞いて欲しい」 俺の目線は、ハルヒを真っ直ぐに見ていた……わけではなかった。 実のところはその先に見えるタンクローリーを見ていた。 タンクローリーは、既に、ハルヒの背後百メートルを切った所にあったのだ。 「キョ……バ、バカ! 何言ってんのよ!」 「ハルヒ」 俺はそれだけ言うと、ハルヒの胴に回していた手を解いて、手を顔に添えた。 「バカ……バカキョン………」 タンクローリーはグングンとその距離を縮めていた。 もうハルヒの背後五十メートルの所にあった。 追記すると、ハルヒの目は潤んでいたと思うような気がする。 「お前がするんだぞハルヒ。命令なんだからな」 「………わかったから、目を瞑ってなさいよ」 「丁寧に言ってくれ」 「目を瞑って。おねがい」 タンクローリーはすぐそばに迫っていた気がする。 だが、その後どこでタンクローリーが止まったかまではわからない。 それから数分、俺は目を瞑りっぱなしだったからだ。 ---- 「キョンさ。あたし今日掃除当番だから、先に部室行っててくれる? 後で行くから」 「おう、わかった。掃除サボんなよ」 「サボらないわよ。あんたも活動サボらないでよね」 「おいおい、他に言うことがあるだろ?」 「……楽しみにしているんだからね」 俺はそう言って、ニヤニヤしながら教室を出た。 今のハルヒの一言に、教室中の人間が仰天していたようだ。 谷口は目も口も全開で仰天していたし、あの国木田でさえも目を剥いていたんだからその衝撃の具合もわかるってもんだ。 「きょ、キョンくん?」 「朝比奈さんじゃないですか。どうしたんですか、こんな所で?」 教室を出た所で、ドアの脇に立っていた朝比奈さんに気が付いた。 二年生であり、全校生徒の憧れの的でマドンナで天使の朝比奈さんがこんな所にいるのは、確かに不思議と言えば不思議だ。 「うん………あの……キョンくんを待っていたんだけど……」 うん。明日俺の下駄箱にカミソリ入りの呪いの手紙が入っていてもおかしくないセリフだ。 今の俺には微塵も怖くない所だがな。 「あの……これって、本当にキョンくんと涼宮さん?」 そう言って見せられたのは、携帯電話の画面だった。 画面には、タンクローリーの乗り入れられた商店街を背景に、抱き合ってキスしている俺とハルヒの姿が写っている。 「どうしたんですか、これ?」 「あのね、これが学校中にメールで出回っているらしいの。その……『涼宮ハルヒ熱愛発覚!!』って」 「なーんだ、そんなことですか」 俺はアッハッハと笑い飛ばした。 朝比奈さんも、それにつられてエヘヘと笑う。 「そうですよね。怪文章の類ですよね、こんなの」 「いえいえ。ただの事実だから笑ったまでですよ。 な、ハルヒ? 俺達ラブラブだよな?」 朝比奈さんと廊下の生徒達、そしてクラス中が再び仰天するのを感じながら俺は堂々と胸を張った。 「そ、そうだけど、それがなによ……」 「もっと他に言うことがあるだろ?」 「ら……ラブラブよ! あたしはキョンが大好きッ! これでいいでしょ、もうっ!」 ふふ、と俺は笑って肩をすくめた。 「何の問題もありませんよ、本当」